2019-01-01から1年間の記事一覧

悪夢と記憶と、その入れ物としての体と。

暗がりの中で、誰かが胸の上に馬乗りになっている。 息苦しい。 誰か、は、男だ。 男は、父のようにも、兄のようにも、かつての客のようにも、知らない誰かのようにも、見える。 男は笑っていた。 笑いながら、興奮したサルめいた仕草で両手を叩き合わせてい…

お人形遊びが好きな男達

「そろそろイッてほしいんだけど」 川崎駅そばのラブホテルでのことだ。ゴージャスな設えの部屋の巨大なベッドにアジの開きのように仰臥していたわたしは、自分の耳を疑った。 「え? なあに?」 ことさらに可愛らしい声を出して聞き返すと、断片的に聞き取…

クソ客のいる生活#002

客からされて嫌な質問というのがある。 たとえば、この仕事をしている理由、住んでいる場所、小さな頃のエピソード、親との関係、彼氏の有無…多くはプライバシーに関わるもので、この仕事でなくとも答えたくないという者がほとんどであろう内容だ。 多くの同…

件名:お仕事入りました

仕事メールの着信は嬉しくもあり、憂鬱でもある。そこに何がどう書かれているかにかかわらず。 本文: お名前:〇〇様 お電話:184-090-0000-0000 待合時間:8/20 17:30 待合場所:●●駅南口セブン前 ホテル:未定 コース:ご新規様限定90分(おススメ割1,000…

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2009年12月 ジェームズ・キャメロンのアバターという映画が日本で公開されたのは、2009年の暮れことだ。3Dメガネで映画を鑑賞をしたのはこの作品が初めてだった。有楽町の映画館でのことだ。仕事で知り合った男とのはじめてのデートだった。映画はとても面白…

クソ客のいる生活#001

「ねえ、入れていい?」 男の顔は弛緩していて、それでいておねだりが成功するかどうかの緊張感で、奇妙に歪んでいる。 「なんで?」 「だって…入れたいから。●ちゃんも、濡れてるし。入れたら気持ちいいよ?」 彼らの返答は、どれもこれも似通っている。 わ…